リプロダクティブ・ヘルスライツ

産婦人科での一ヶ月の実習を終えて、最後の総まとめとして5年生に対するレクチャーを行いました。

リプロダクティブ・ヘルスライツをテーマにして、gender inequalityと日本社会の課題を紹介したあとに、日々のアンテナの張り方やポリクリの過ごし方を提案させてもらいました。

 

今回リプロダクティブ・ヘルスライツを調べていくにあたって、本当に大変で、悲しい現実が日本社会でまかり通っていると感じさせられました。

内閣府での調査1)によると、日本では1/3の女性が配偶者に暴力をふるわれた事があると回答し、1/7の女性は繰り返し暴力を受けているそうです。

高校生のクラミジア感染率も他の先進国と比べて圧倒的に高いと言われています2)。

HPVワクチンの接種率は本当に低く、子宮頚癌による死亡率は年々増えています3)。

他にも堕胎罪は未だに効力を取り戻す状態にいること、経口避妊薬を手に入れるのにもハードルが高いこと、女性不在の政策決定など、女性はこうあるべきという母性神話を打ち砕き日本のgender inequalityが解決される日は来るんだろうかと思いました。

どんな性の生き方を選んだとしても、自分らしく生きられる社会になって欲しいと思います。男なんだから仕方なくこう生きろ、女なんだから仕方なくこう生きろ、他はわからんから知らんというのは古すぎて、人類が進歩してる気がしないです。

つい最近も足立区の白石議員が「日本中がLGBTになってしまうと足立区が滅んでしまう」というような発言をして話題になりましたが、未だにこんな人達で日本は動いているんだと、驚くと同時に悲しくなりました。

 

ともかく、医師としては社会に目を向けるのは大事だなと思い知らされます。このような事実も知らずに適当な声をかけてしまうと傷つく患者さんを生んでしまいそうです。状況にもよりますが、病気そのものに手を出すよりも、まず人を知ることを意識しないといけないなと思いました。


そのような事を先週思い立ったので、無理を言って産婦人科実習に外部見学を組み込んでもらいました。僕らが相手にする人や連携する行政サービスを知るために、市役所の特定妊婦訪問や児童相談所に見学に行かせてもらいました。

そこでは小説に出るような話より、もっと複雑なケースが存在していました。医学部に進学する人間は世の中を知らないと揶揄されることもありますが、それも仕方ないと思えるほど、僕には社会に対する知識も経験も足りなかったと感じました。

 

予防医療、教育、町づくり、できることや足りないことはまだまだあると思います。医療よりも行政がより重要な要因な気がしますが、現場を知るためにもまずは社会を知ってそれを診療に役立てること、成長するうちに社会にも影響を与えられるようになることが医師としての社会貢献なのではないかと思いました。

 

無理を言って市役所や児相に繋げてくれた産婦人科の皆本先生

指導してくれた齋藤先生

家庭医目線の女性医療の相談に乗ってくれた池田裕美枝先生

出雲市市役所健康増進課、出雲市児童相談所のみなさんに深く感謝申し上げます。

 実りのある産婦人科実習になりました。

 

※緊急経口避妊薬について、薬局で買えるようにすると10月7日に発表されました

少しずつ変わっていってほしいと思います。

1)男女共同参画局:男女間における暴力に関する調査(平成29年度調査)

2)高校生のクラミジア感染症の蔓延状況と予防対策 今井博久 国立保健医療科学院疫学部 2006年 11 月 13 日

3)日本産婦人科学会